フェンシング
複数のオリンピックでメダルを獲得した太田雄貴選手の活躍で、日本でも一躍注目を集めたフェンシング競技。その魅力を伺おうと、横浜センターの教室におじゃましました。
一瞬の攻防
ギン、カッ、ギュンと剣を交える音が響きます。目にも留まらない速い攻防は、迫力に満ちています。その緊張感の中、選手は剣で会話をしていると言います。
「剣先は指と同じ感覚です。押さえ合った剣の圧力、たたいた時の反動に、相手の考えや次の動きを感じ取ります」と語るのは講師の横山陽直さん。
前に出るか下がるか、左か右か。二手、三手先を読む心理戦。フェンシングが "戦うチェス" と言われる由縁です。
「リーチの長い相手やスピードのある人が相手でも、戦術しだいでカバーできます。そこがフェンシングの面白いところ。思いどおりに決まった時はうれしいですね」「ゲームを終えて握手をした時は、勝っても負けても満足感があります」と受講者さん。
ゲームで楽しさを知る
このように、数十分の1秒の駆け引きが魅力のフェンシングですが、「子どもや中高年も気軽に楽しめる面白さがある」と横山さん。やったことのある人がとても少ないスポーツなだけに、「門戸を開きたい」と言います。「チャンバラの延長だっていい。私も『怪傑ゾロ』に憧れて始めたくらいだから(笑)」とも。
横浜センターの講座も、70代の経験者、社会人になって始めた方、小学生の初心者など経歴は様々。「突きが決まった時は、最高に気持ちがいい」と言う小学生に、先輩たちが代わる代わる相手を務めてレッスンするなど、ゲームの緊張感の中にも和気あいあいとした雰囲気があります。
この日の講座には、フェンシング初体験の小学生も参加。ドラマで見たシーンがかっこ良かったらしいです。剣の持ち方と基本の動きを教えたところで、「相手と向かい合ってみよう」と横山さん。不安げに剣を構える少年に「思い切って突いてみて」と声を掛けます。恐る恐る先輩の胸に剣先を突き付けると、ピーッという音とともに電気審判器がともります。「そう! うまいぞ!」。調子に乗って、あっという間に5点を取り勝利。マスクを取ると笑顔があふれます。
「フェンシングは、体を動かしてこそ面白さが分かります。剣技ならではの迫力を体感してほしいですね」
基本をしっかり教え、試合に出たい人には勝つための個人指導をする横山さん。同時に、レッスン時間の7割をゲームに割いて、フェンシングの楽しさを体で知る工夫も。
初体験の少年は、「スカッとしました。絶対にやる! 」と目を輝かせていました。
※「よみカル」2019夏掲載 横浜センター「フェンシング」横山陽直講師

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