[講座リポート]ぶひぶひ絵本塾(大森センター)

 絵本作家のかさいまりさんが大森センターで教えている「ぶひぶひ絵本塾」の"快走"が続いています。講座で作った絵本がさまざまなコンクールで賞を獲得しているほか、この3月には受講者の一人、タカタカヲリさんの作品が全国学校図書館協議会絵本委員会による、2023「えほん50」に選ばれるなどしています。デビュー30周年を迎えた、かさい先生にお話をうかがいました。

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 受講者が考えた絵本の案をページ単位で発表させ、コメントするなど工夫をこらした指導をするかさい先生(中央)。クラスには片道2時間余かけて通う人もいる(2023年6月5日)

 


ehon2_300-386.png 北海道出身で現地の広告代理店のグラフィックデザイナーをしていた、かさい先生は結婚を機に東京都内に転居。しばらくたった時、突然、絵本作家になる、と思い立ったそうです。「何か残るものを書きたい。それは絵本かな、と思った」と振り返ります。「広告の仕事は商品を出すので、きれいな顔しか描かない。絵本ならいろいろな表情が描けるから、が理由」

 雑誌でたまたま見かけた絵本のコンクールに応募し、優秀賞を受賞。受賞作をリライトして出版社に持ち込み、40歳の時、絵本作家デビューを果たします。そして2017年4月から、よみカルで教え始めました。

 これまで、よみカルで教えたのは20人ほど。現在の受講者の中でも4人がすでに作品を出版したり、絵本コンクールで賞を取ったりしています。タカタさんもその一人です。タカタさんは、もともと違う先生に習っていたそうですが、「まり先生のうわさを聞いてお世話になろうかな」と2018年初めに、よみカルのかさい先生の門をたたいた、といいます。

ehon3_300-382.png 今回、選ばれた絵本「おいらはちびのとうちゃんだい!」(文研出版)は、気ままに生きてきたタコの「おいら」がある日、生まれたばかりの足が「10本」の「ちび」に「とうちゃん」と呼ばれ、ともに暮らすようになって......というお話です。

 タカタさんにとって3冊目の絵本ですが、「タコとイカは似ているよね。もし家族なら面白いだろうな」と思いついたことが始まりだったそうです。それが、かれこれ3年前のこと。講座で、かさい先生のアドバイスを受けながら、ブラッシュアップしてようやく昨年、出版されました。

 絵本作家を目指す人の指導について、かさい先生は「出版社への持ち込みやコンクールなどの審査で、良い結果が出せるレベルの作品が書けるようになることが目標です。数年で結果が出るよう、自分の得意な分野のお話作りになるように持っていきます」としています。それには「絵本の材料の選び方などその人に合ったものでないと」といい、「(受講者が)一人でも多く、絵本の出版という夢をかなえられるようにしたい」と話していました。

2023「えほん50」
 全国学校図書館協議会絵本委員会が、2022年1~12月までの1年間に刊行された絵本の中から子どもたちに読んでほしい本として選び、推薦している50冊。優れた絵本の普及と子どもの読書振興の狙いで、同協議会が選定していた「よい絵本」を継いで2019年から始まった。