[講座リポート]社長と巡るひたちなか海浜鉄道湊線 キハ205貸切乗車と車庫見学

ひたちなか20_500-333.jpg 2021年3月29日(月)、10月24日(日)、11月28日(日)に、「社長と巡るひたちなか海浜鉄道湊線キハ205貸切乗車と車庫見学」講座を開催しました。当初の予定は3月29日と5月16日。コロナによる延期を重ねての開催でした。講座の目玉は、国内最古級の気動車「キハ205」に乗車すること。集合は、ひたちなか海浜鉄道湊線始発駅の「勝田駅」です。ホーム上でカメラ片手に列車の到着を待ちます。

ひたちなか02_200-172.jpg ひたちなか22_172-183.jpg


ひたちなか16_300-200.jpg キハ205に乗車して出発です。湊線の各駅の看板はその土地の名産や名所を図案化した看板です。駅に停車するごとに写真を撮る方も。

ひたちなか06_200-112.jpg ひたちなか07_200-112.jpg




 キハ205に同乗して案内してくださったのは、ひたちなか海浜鉄道社長の吉田千秋さん。
 キハ205は昭和40年に製造された車両です。最高時速は60キロ、現役で走るのは湊線だけ。大事にメンテナンスしながら走らせています。那珂湊駅手前、10パーミルの坂(およそ6度の勾配)をキハ205はエンジン音をさらに上げて進みます。吉田さんが大きなエンジン音で声が聞き取りづらくなることを詫びると、「このエンジン音が聞きたいんです」「このエンジン音が懐かしい」と話してくださる受講者の方も。天井の扇風機や本当のあみだな、テーブルに備えついている栓抜き、車内のノスタルジーに浸りました。

 殿山駅を過ぎると、吉田さんが「右手をご覧ください。まもなく海が見えます。湊線で唯一海が見えるところです」と話します。すると海が見えてきました。踏み切りのところで視界が広がり、車内から歓声が上がります。

ひたちなか17_300-200.jpg 美乃浜学園駅あたりにさしかかるとサツマイモ畑が広がります。ひたちなか市の辺りは干し芋の生産が国内シェア90%を占める日本一の干し芋生産地。「北海道的な風景をしばしお楽しみください」と吉田さん。皆さんも車窓からの風景を静かに楽しみました。

 終点、阿字ヶ浦駅で折り返しです。発車までの少しの時間、吉田さんは列車から降りてホーム横にある鉄道神社を解説してくださいました。ご神体は「キハ222」です。

 勝田駅から阿字ヶ浦駅まで全長14.3キロメートル、約30分の列車旅でした。それから、那珂湊駅へと折り返し、車庫見学へと向かいました。



ひたちなか14_400-225.jpg 車庫では、キハ205の中で吉田さんに「田舎の鉄道はたいへん でもがんばる ~みんなでいっしょにまちづくり」と題して講演していただきました。

 吉田さんは公募を経て、2008年より社長を務めます。利用者の減少でローカル線の8割が赤字経営と言われますが、湊線も例外ではありませんでした。しかし、地元住民の「鉄道をなくさせない」という熱い思いと吉田さんの数々のアイデアで営業は改善していきます。

 地元住民の方々は「おらが湊鐡道応援団」を結成し、観光案内や沿線の商店や飲食店などと連携して乗車特典サービスの実施、各駅の清掃作業も担ってくれています。吉田さんは、地元住民の利便を一番に考え、ダイヤの見直しや駅のホームで朝市などのイベントを企画し開催しています。住民の要望で作った駅は、国道の下に作って屋根を節約しました。

 また、ひたちなかは東京から特急で約1時間、車で約1時間半という距離。東京から近いのに、ローカル鉄道とのんびりとした風景が広がっていることから、湊線はCMや映画のロケ地として採用されることが多くなりました。「これは外の人に気づいてもらった魅力」と吉田さんは話します。

 吉田さんの様々なアイデアと地元住民の皆さんの協力で、2017年には単年度収支は黒字になりました。そして2021年には国営ひたち海浜公園までの延伸が決定。「守りから攻めへ」吉田さんのお話の後、受講者の皆さんからはエールの拍手が送られました。


ひたちなか15_400-225.jpg 続いて、ヘルメットを被って車庫見学です。キハ205にはしごをかけてもらい、ゆっくり地面におります。社員さんによる各車両の説明はもちろんのこと、受講者の皆さんからも熱心な質問が飛び交いました。湊線はラッピング車両の依頼も多く、お待ちいただいている状態とのこと。ただ、ロケの依頼にも応えられるようにとラッピングをしない車両もあります。塗装もあえて退色をそのまま。「きれい過ぎるとローカル線っぽくないですからね」と笑っていました。

 講座は那珂湊駅で終了し、解散しました。解散後、おさかな市場まで足を延ばしました。歩いて10分ほどです。コキアやネモフィラで有名な国営ひたち海浜公園は終点阿字ヶ浦駅からバスで10分ほど。延伸されたらもっと便利になりますね。ぜひひたちなかへお出かけください。



吉田さん.jpg吉田千秋さん
公募を経て、2008年にひたちなか海浜鉄道社長に就任。地域の人々、地域の行政の方々、多くの人の支援を受けてひたちなか海浜鉄道の利用者増と収支改善に励んでいる。また、2012年より国土交通省が任命する地域公共交通マイスターも務め、ローカル鉄道経営と地域共生の大切さについての情報発信なども行う。





受講者の声

  • 早く国営ひたち海浜公園まで延長できるようがんばってください。応援しております!
  • マニアックな説明がすばらしかった。通好み。
  • 祖父と乗った思い出の線です。いつまでも走り続けてください。応援しています。
  • ひたちなか海浜鉄道の状況が大変よくわかる講座でした。これからも地域と協力して頑張ってください。
  • 鉄道や列車のことがよくわからなくても、丁寧な説明でよくわかり、楽しめました。はるか昔、子供の頃、家族で夏の海水浴にきていました。懐かしくて参加しました。また来ようと思います。
  • 普段立ち入れない場所に案内してくださり、とても興味深かったです。経費を抑えながら運行するご努力もしみじみ伝わってきました。とてもよい所なので、個人的にまた乗車しに来たいです。
  • 千葉県市川市から参加しました。子供が鉄道好きのため、都会~地方ローカル線まで様々乗っています。地方のローカル線はどこも赤字だと思っていましたが、ひたちなか海浜鉄道は黒字ということに驚きました。地域住民や自治体が先導して、地元の鉄道を盛り上げていて、理想的な地域の鉄道会社の形だと思いました。大洗にある「めんたいパーク」が好きで、時々家族でドライブがてら来ています。那珂湊のおさかな市場は初めて知りました。次からは、那珂湊にも足を延ばそうと思いました。
  • キハ205引退しないでください。
  • コロナに負けず、"攻め"で頑張ってください。祖母の家が日立電鉄の駅の近くで、よく利用していましたので廃線になってとても残念でした。その頃、同じ問題を抱えながらも頑張って残したひたちなか海浜鉄道の頑張りはすごいと思います!
  • 公共交通機関の維持が地域の活力維持にとって大切なことだと実感しました。そのことを地域の人々にも理解していただくことが重要だと感じました。
  • 子どもの頃に乗ったディーゼル車のエンジン音を聞いてとても感激しました。吉田社長のお話もとても面白かったです。絶対に廃線にならないよう、お願いします。
  • 湊線の延伸はぜひ実現してください。絶対に乗りに行きます。
  • 吉田社長の鉄道の再建にかける意欲をすごく感じました。やはりこのパワーはすごいと思います。ぜひ、国営ひたち海浜公園への延伸、実現してほしいです。
  • 私も茨城県民です。応援しています。延伸楽しみにしています。