[WEB連載コラム]第13回 ブルー・アイランド氏がやりたかったこと(文と絵 青島広志)

ブルーアイランド_13回タイトル_900-200.jpg

202010-01_1000-697.jpg

 

 現在、B(ブルー・アイランド=青島)の仕事の多くは「トーク」と言われる、話すことが含まれている。音楽家の肩書が付いているので、演奏を伴うわけだが、純然たる喋(しゃべ)りだけの場合もあり、司会、対談(の相手)などと記される。大先輩の黒柳徹子様と同様な位置づけと言ったら不遜だろうか?

 いったいいつから人前で喋るようになったのか。顧みれば、幼稚園のクリスマス会(カトリック系だった)に、樹の精を振られ、童話をほぼそのまま語ったのが始めの記憶だ。イエスさまが生まれたお祝いに、花や鳥たちは踊りや歌で祝うので、代わりに話を贈り物にするのである。湖を囲んで住んでいる動物たちがケーキを半分ずつ食べて回していき、そのかけらが元の家に戻ってくる話だった。しかしこれは暗誦(あんしょう)であり、自分の意志は入っていない。恐らく先生はBが人前で話す力を持っていると見抜いていたのだろう。ただ現在でもそうだが、公の場で自分の意見を述べる場合は、あらかじめ頭の中で文を組み立ててから緊張して喋っているのである。

 当意即妙に話せるようになったのは、大学時代、友人たちの結婚式で司会を頼まれるようになってからではないか。もちろん、BGMや伴奏を弾く傍らではあるが、気が付けば話の方が主になっていた。この類の司会で気を付けていることは、当事者の意志を汲み取ることに尽きるだろう。その意味で、飛び入りで話したがったり、異様に長話になったりする客に対して制することは大変に難しい。また、敬語の使い方にも気を配っているが、これは祖母の教育も大いに役立っていると思われる。

 音楽会の司会について、演奏を兼ねている場合は、一つの流れを自分で作れるのである程度は自由になる。ただし最上の演奏を目論(もくろ)む場合は、司会が従となり、そちらを主とすれば、時に演奏に破綻が出るものだ。問題なのは司会のみで参加する場合である。プロの司会者などは、本番のみにやって来る強者もいるが、Bは稽古から参加する。演奏者の性格、曲の聴き処や解釈を熟知するためだ。一番大事なのは、演奏者に親近感(もっと正確に言えば使用人に対するような優越感)を持っていただくことで、それさえできれば、もう成功したも同然である。自分が音楽家であることをひけらかさないことだ。いろいろと考えていれば、上がる暇などない。それが最近、自分の方が有名なのだと自信たっぷりで居丈高な司会者が増えてきている。自戒したい。



青島さん 写真提供:Gakken Pub199-248.jpg

■プロフィル
 東京藝術大学講師。オペラや合唱など作曲した作品は200曲を超える。ピアニスト、指揮者としての活動も47年を迎え、コンサートやイベントもプロデュース。「題名のない音楽会」「世界一受けたい授業」などに出演している。


★お知らせ

 荻窪センターでは毎月1回、「オペラ実演の醍醐味(ロマン~近代編)」を開講中。9月は「メリー・ウィドー」-究極のオペレッタ、「こうもり」と並び、負けず劣らず人気のある作品を解説・分析し、実際の演奏をお楽しみいただきます。若い頃を懐かしむだけでなく、新しい人生に向かうエネルギーをもらえます。

 横浜センターでは、動画配信型のオンライン講座「青島広志のオペラ420年を自宅で学び歌う(10/1~10/31まで配信)」の申し込みも受け付け中です。

次回の掲載は11月20日予定

バックナンバー

(情報誌「よみカル」2017秋号~2019冬号に掲載。2020年春からWEB掲載)

第1回「ガムラン奏者」

第2回「少女漫画のアシスタント」

第3回「香港の中華料理店の下働き」

第4回「オペラのコレペティートル」

第5回「プランクトン研究者」

第6回「お花を活ける人」

第7回「写譜屋」

第8回「古本屋の店主」

第9回「プールの監視員」

第10回「女性文化の担い手」

第11回「服飾デザイナー」

第12回「占い師」