[WEB連載コラム]第12回 ブルー・アイランド氏がやりたかったこと(文と絵 青島広志)

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 世界中に病気が蔓延(まんえん)している。家に籠(こも)って耐え忍ばなければならない。未知の病原体で、この先どうなるのか判(わか)らない。こういう時こそ占いが必要ではないだろうか。
 出勤しなくていいから朝刊をゆっくり読む。暗いニュースばかりだが、最後までとっておくのは運勢の欄で、おみくじのような短文が干支によって違えて書いてある。時節柄だろうか、希望を持てるような示唆が読み取れる。

 この事態は「第二次世界大戦以来の~」と形容されている。75年前のちょうどその時、わが父、青嶋弘人(ひろと)はビルマ(=現 ミャンマー)で終戦を迎えたのだった。インパール作戦という、インドまで勢力を拡げようとする軍部の先鋒として、電線を引く任務に就いていたらしいが、インドに到達する直前に捕虜となり、ビルマで2年ほど過ごした。そこで「コックリさん」を覚えたというのである。父は神秘体験に興味を示すタイプではないから、収容されていた仲間の誰かが教えてくれたのだろう。箸とて十分ではなかったから、3本の小枝を使う方法で、紙に文字を書き、全員で唱えると3人の指の上に立てた枝が動き回り、字を指していく。それで帰国の日を占ったと聞かされた。

 B(ブルー・アイランド=青島)が大学生の頃、オカルトブームに便乗して二次的な流行があった。その頃は既にコインを使う方法にかわっており、戯(たわむ)れに友人とやってみたことがある。しかしこれは「占い」というのとはちょっと違っていて、憑(つ)き物の一種なのではないだろうか。
 真の占いというのは、もっと積極的なもので、自らの技術と知識を働かさなければならない。東洋の占いには修業がかなり必要だが、西洋のはそれより簡単なような気がする。その例がトランプ占いで、昭和30年代までの少女雑誌には必ずそのページがあった。Bも試したことがあるが、持っていたトランプがディズニーの絵柄で、なんとなく興をそがれた。そうこうしているうちに、上記の時代となり、ここで「タロット」がもたらされたのである。

 近所にジプシー占いを看板にしている「天眼子(てんがんし)」なる占い師が住んでいて、見料(けんりょう)はなんと1万円だったのだが、「タロット占い」とも書いてあった。実物を手に入れたのは高3だから昭和47年だろう。池袋パルコの詩の店で求めた。絵札(大アルカナと言うらしい)のみだったが、解釈は自由なようで、そこが気に入っている。

 平和な日がいつ戻ってくるのか。ある程度の期待を込めて、家族であるいは一人で静かに占ってみるのも過ごし方の一つである。



青島さん 写真提供:Gakken Pub199-248.jpg

■プロフィル
 東京藝術大学講師。オペラや合唱など作曲した作品は200を超える。ピアニスト、指揮者としての活動も40年を超え、コンサートやイベントもプロデュース。「題名のない音楽会」「世界一受けたい授業」などに出演している。


★お知らせ

 公開講座「青島広志のオペラ420年を90分で」、オペラの歴史をたどりながらテノール小野勉さんのリードで「女心の歌」などを歌います。この講座は日程を延期、調整中です。

荻窪センターでは毎月1回、「オペラ実演の醍醐味(ロマン~近代編)」を開講中。ヴェルディとプッチーニの名作を解説・分析し、実際の演奏をお楽しみいただきます。

次回の掲載は8月20日予定

バックナンバー

(情報誌「よみカル」2017秋号~2019冬号に掲載。2020年春からWEB掲載)

第1回「ガムラン奏者」

第2回「少女漫画のアシスタント」

第3回「香港の中華料理店の下働き」

第4回「オペラのコレペティートル」

第5回「プランクトン研究者」

第6回「お花を活ける人」

第7回「写譜屋」

第8回「古本屋の店主」

第9回「プールの監視員」

第10回「女性文化の担い手」

第11回「服飾デザイナー」